サザエさんのオープニング曲はスカなのか?
学生の頃、一つのくだらない論争がありました。それは友人の何気ない一言がきっかけでした。
「サザエさんのオープニング曲ってスカじゃね?」
当時はKEMURI、POTSHOT、SNAIL RAMPなどのいわゆる「スカパンク」が流行っていました。その流れもあっての友人の素朴な疑問だったと思われます。
確かに、サザエさんのオープニング曲には管楽器のセクションもあるし、ギターがスチャスチャ鳴っています。
当時は論争がうやむやなままに消えてしまいました。しかし、長い時を経て、改めてここで検証したいと思います。
サザエさんのオープニング曲リリース当時の時代背景
よく耳にする「お魚くわえた〜」のサザエさんのオープニング曲『サザエさん』は1969年にリリースされました。
1969年当時は、アメリカは人類初の月面着陸を成し遂げました。反面、ベトナム戦争は泥沼化しており、国内でもアフリカ系アメリカ人の公民権運動で有名なキング牧師が暗殺された翌年で、根強く人種差別の感情が残っていた時代です。
そんな1969年当時に、音楽としてのスカは、ジャマイカですでに人気になっていました。
その後、ジャマイカのスカの影響を受けた2トーンと呼ばれるスカのスタイルが発生しますが、それは1970年代後半のイギリスまで待たなければなりませんでした(The SpecialsやMadnessなど)。
つまり、サザエさんがスカミュージックだとすると、当時はかなり先進的な音楽だったことになります。
仮説:サザエさんは人類融和の願いが込められているのではないか?
ここで一つの仮説が浮かんできます。
サザエさんは家族の大切さを表現している作品です。
前述した、1970年代後半にイギリスで発生する2トーンでは、白人と黒人が一つのバンドでスカにパンクの要素を取り入れて演奏しました。人種差別が当たり前だった時代にこれは革命的なことでした。つまり、反差別の象徴的なムーブメントでした。
だとすれば、昭和の歌謡曲の大作曲家、筒美京平は人類融和の大切さを訴えるために、あえてジャマイカを発祥とするスカの要素を、2トーンに先駆けてサザエさんのオープニング曲に取り入れたのではないか?
そう、サザエさんとは安易にスカの要素を取り入れたのではなく、人類融和の大切さを訴えた新たな時代へ向けたアンセムだったのです。
結論:サザエさんは本当にスカなのか?
サザエさんは、当時先進的だったスカの要素を取り入れた人類融和のアンセムである。そう確信を得た僕は改めて、サザエさんのオープニング曲を聴いてみました。
人類融和の願いが込められていると思うと、より一層味わい深いメロディに感じます。
すると、昔ピアノをやっていた妻に言われました。
「この曲、裏打ちじゃないからスカじゃないわよ。」
?!
「さっきからバカみたいにサザエさんの曲聴いてるけど大丈夫?」
なんてことだ!僕は視野を狭くして、大局を見ることができていませんでした。そんな単純なことに気がつかないなんて!!
10数年の時を経て、ようやく一つの論争に終止符が打たれました。
「サザエさんのオープニング曲はスカではない。」
今度友達に会ったら教えてあげよう。多分忘れてるけど。
サザエさんの曲にどんな想いが込められているとしても、差別はいかんよなぁ。